1.ヨークシャーテリアがかかりやすい「膝蓋骨脱臼」

膝蓋骨脱臼(通称 パテラ)は、膝にあるお皿のような骨、膝蓋骨が脱臼してしまう病気です。ヨークシャーテリアは発症ケースが多い犬種のため、病気について知っておくといいでしょう。
膝蓋骨脱臼とはどんな病気?

膝蓋骨脱臼と診断されるワンちゃんは毎日のようにいるというほど、とにかく発症例の多い病気です。
 
 小型犬に多い病気として認知している方も多いかもしれませんが、日本では小型犬の飼育頭数が多いだけに、発症例も多いのかもしれません。実際には大型犬にも見られ、犬種や年齢を問わず多くのワンちゃんが発症する可能性があります。
 
 また、膝蓋骨脱臼は症状を伴わないことが多く、普通に過ごしていれば見過ごしてしまうことも少なくありません。たまたま行った身体検査で見つかったなんてこともあります。
 
 膝蓋骨とは膝にあるお皿のような骨のことで、通常は大腿骨にある溝に収まり、屈伸運動など膝の動きを担っています。座ったり立ったりするときも、膝をなめらかに曲げて活動をサポートする重要な骨です。
 
 この膝蓋骨が溝から外れてしまうことを膝蓋骨脱臼といい、内側に外れる内方脱臼と、外側に外れる外方脱臼があり、小型犬の場合は内方脱臼が多いといわれています。
膝蓋骨脱臼の原因は?
膝蓋骨脱臼の原因は先天的なものと、外傷や栄養障害などの後天的なものがありますが、その多くは先天的なものです。特にヨークシャーテリアなどの小型犬の内方脱臼は、遺伝的な要素が強く関係しているといわれています。
 
 先天的なものは、もともと膝蓋骨が収まる溝が浅かったり、膝蓋骨周辺のじん帯や筋肉のバランスが悪かったりと、生まれつき持つ形態の異常が原因です。
症状はグレードによって異なる
膝蓋骨脱臼の多くは無症状で気づかないことも多いですが、症状はグレードによって異なります。グレードは大きく分けて4つです。
 
 〇グレード1
 ・膝蓋骨は正常な位置にあるため無症状だが、指で押すと脱臼し、指を離すと戻る
 ・稀にスキップのような歩行をすることがある
 
 〇グレード2
 ・膝蓋骨は正常な位置にあり、膝を曲げると脱臼する
 ・脱臼した膝は指で押したり、膝を真っすぐにしたりしないと戻らない
 ・脱臼した状態が戻らないままだと、足を引きずるように歩く
 ・放置するとグレード3に進行する
 
 〇グレード3
 ・膝蓋骨は脱臼したままであり、骨の変形も見て分かるようになる
 ・指で押すと一時的に戻る
 ・足を引きずるように歩き、内股になる
 
 〇グレード4
 ・膝蓋骨は脱臼したままであり、骨の変形も重度になる
 ・指で押しても膝は戻らない
 ・うずくまるように歩く、足を地面に着地するのも困難になる
 
 グレードが進むにつれて見るだけで明らかになりますが、症状が少ない中でもできるだけ早い段階で見つけることが進行の予防につながります。
膝蓋骨脱臼の治療法は?
膝蓋骨脱臼を発症したヨークシャーテリアのグレードにもより治療法は異なります。鎮痛剤やレーザー治療で症状を緩和することもできますが、根本的な治療法は外科手術です。
 
 手術を行う場合は麻酔のリスクや費用、手術のスケジュールなどを確認する必要があるため、かかりつけの獣医さんに詳しく聞きましょう。
2.膝蓋骨脱臼にならないようにできること・予防策は?
日常から気を付けたい3つのポイント
ヨークシャーテリアが膝蓋骨脱臼にならないように飼い主ができることは、膝関節にできるだけ負担をかけないことです。日常から気を付けたい3つのポイントを確認しておきましょう。
 
 〇フローリングは危険
 つるつる滑るフローリングやマットはヨークシャーテリアが滑って転倒してしまうほか、滑りそうな瞬間に踏ん張ったとしても、膝に大きな負担がかかってしまいます。
 ヨークシャーテリアにとって滑る床は非常に危険です。必ず滑りにくいマットを用意しましょう。
 
 〇肥満に注意
 肥満になり体重が増えると、膝関節にかかる負担は大きくなります。華奢なヨークシャーテリアにとっては、たったの数グラムでも負担が変わってきます。適性体重よりも数キロオーバーとなれば、なおさら膝蓋骨脱臼のリスクを高めることに。
 個体によって適正体重は異なるため、分からない場合は獣医さんに聞きましょう。
 
 また、痩せすぎも筋力不足により膝に負担がかかります。やはり適正体重をしっかり管理してあげることが大切です。
 
 〇激しい運動をさせない
 過度な運動や、階段やソファからのジャンプなど、激しい動きは膝に負担をかけます。ワンちゃんは軽々とやって見せていても、膝関節には大きな負担がかかっている可能性も。
 
 室内では段差をできるだけなくし、ソファやベッドなどの高いところに乗らないように工夫しましょう。階段を使わざる得ない場合は、スロープなどがあるといいでしょう。
屈伸運動とマッサージで発症率を下げられる?
これだけヨークシャーテリアは発症率が高いと聞くと、飼い主は不安になりますよね。しかし朗報です。獣医さんの研究や働きかけにより、現在は膝蓋骨脱臼(パテラ)の予防方法が推奨されています。
 
 ワンちゃんの成長期に後ろ足を鍛えることで、膝蓋骨脱臼の発症リスクを減らせるというのです。また、その方法が「屈伸運動」と「太腿のマッサージ」です。さっそく方法を確認しましょう!
 
 〇屈伸運動
 ・ヨークシャーテリアの膝を包むように持つ
 ・優しく膝を曲げて、伸ばす動きを1日5分以上行う(限度は100回)
 ・太腿の張りを感じながら行う
 
 〇太腿のマッサージ
 ・ヨークシャーテリアのお腹が見えるようにする
 ・太腿の内側を、指の腹でくるくるとマッサージする
 
 どちらも強くしたり、無理やり行ったりするのは禁物です。優しく、無理なく行いましょう。
 また、マッサージ位置の確認にも、以下のリンクを参考にしてみてくださいね。
 参照元https://www.anicom-sompo.co.jp/topics/images/20161028.pdf
まとめ
チワワの次に小さく、華奢でかわいらしいヨークシャーテリアですが、膝関節への負担には十分な注意が必要です。発症例の多い膝蓋骨脱臼は、日頃から予防に努めたり、症状について勉強したりしておけば、予防や早期発見につながります。
 ぜひヨークシャーテリアの膝蓋骨脱臼について知識を深めていってください。
 
 以下のリンクからはヨークシャーテリアの子犬と、そのブリーダーを探すことができます。こちらもぜひご覧くださいね。
著者/ブリーダーナビ編集部


